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カササギ殺人事件

読んだ

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

上巻は、1950年代の英国の小さな片田舎で起きたカササギ殺人事件という作中作。 下巻がその作中作の作者の殺人事件と最終章の原稿を探した現代ミステリー。

作中作でさえもしっかりしたミステリーなのに、それを下巻で小説の解説がのごとく伏線を回収していく構成。

小説の中のキャラクターの心理状況と、その小説の書き手や編集者の心理状況など複雑な感情が入りみだりながら、最後に作中作の最終章が明かされるのはすごいとしか言いようがない。

上巻の真面目さ。下巻のチープさなど物凄い色々考えられたミステリー。

エンジニアのためのマネジメントキャリアパス

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この本は

筆者がスタートアップに移籍してから、テックリード、CTOとスケールアップしていった経験を元に、自分が助言できそうな言葉を National Novel Writing Month (NaNoWriMo)と呼ばれるイベントでまとめ上げたものを一冊の本にしたもの。

管理の道に足を踏み入れたエンジニアがたどる典型的なキャリアパスを段階的に解説し、その取り組みの秘訣を紹介している。

感想

一言で言うならば、網羅的。

管理の道と言っても、メンターからCTOまで順番に解説されている。 この間に、テックリードや事業部長、経営幹部とあるのだが、それらをひとつひとつ筋書き立てて文章化されている。

少し大きめの組織にいるエンジニアだったらば、新人が入ってきたときに、その面倒を見るといったメンター制度に放り込まれることがあると思うけれども、それがこの管理の道の最初の一歩として説明されていることにまず驚いた。そこからテックリード、管理者、管理者の管理者、CTOと求められる能力の変化、実際にどのように変わっていくかを自分の経験を踏まえた解説は納得するところが多い。読み手としては、途中まではあるあるな話なのだが、CTO経験者はそんなに多いわけではないので、途中から、自分の上の人はこういうことを意識したりするのかという目線に切り替わっていくことになる。

これだけ網羅でも足りないところはあるのだが、それを及川さんのまえがきでフォローされているところも関心する。 (本編は最後の文化に押し込んでいる内容が多い)

いま現在管理職をやっている人にも良いが、エンジニアの役職がどのようなものなのかを知りたい人にも有用な一冊。 そして、ここまでロジカルに人や組織を管理をするということを説明されると、何かでガツンと殴られたような気分にもなれると思う。

エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド

エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド

もいもい

もいもい (あかちゃん学絵本)

もいもい (あかちゃん学絵本)

この本は

いろいろな実験をして赤ちゃんが注目をするものを出した絵本。

感想

たしかに赤ちゃんにこの絵本を見せると注目する。泣いていても一瞬泣き止んでこっちを見る。 こっちを見た後に絵本をつかむ。つかんだ手で絵本のページを引きちぎろうとする。

赤ちゃんの絵本は、注目をしてくれるかどうかと同じくらい、頑丈かどうかが大事で、油断するとすぐに舐めるし、引きちぎろうとする。この本の紙は薄いのでもっと年齢にあわせて厚紙にしてほしかった。

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

この本は

最近色々なインターネット企業で導入されているOKRというフレームワークの導入ストーリーとその解説。

感想

自分はOKRでの目標管理をしていた経験はなく、OKRで管理しているチームのメンバーから、どういった良いことや悪いことがあるかを聞いたことがあるくらいだ。 そのチームは、最初にOKRがうまくいかなかったが、改めてやり直しをしてやっと回り出したらしい。

実際にこの本にも「OKRの導入は最初は失敗する」と書かれている。この本や自分の聞いたの話をまとめるとこんな罠がありそう。

  • 目標(Objective)の難易度設定を間違える - 終わらない目標を設定してしまう。 or すぐ終わってしまう目標を設定してしまう
  • 目標に数字を入れてしまう - 事業達成のための数字目標が先に入ってしまう。数字目標はKey Resultで設定するべきと書かれている。卵が先か鶏が先か
  • OKRを設定したが、進捗を追わない - OKRをやっている人で、チェックイン・ミーティングがすごく大事だと言っている人もいる。1週間でも人と人の認識は離れることがあるそう
  • OKRと経営幹部との認識がずれている - 試しに一部部門で導入したときに、その管理チームとのつなぎ合わせをするのを逃すと大変そうだ。
  • 機能部署ごとにOKRを設定している - 機能単位で割ると、本当に事業に聞く目標を追いづらくなる。
  • KRが100%達成することを前提に設計してしまう - これは目標は100%達成するものだという観点で考えると、ついやってしまいそうだ。

個人的に、このOKRのような組織目標の管理は、実は個人の給与の上昇を決める査定の相性は悪そうな気がしている。個人目標までにOKRを落とし込んだとしても、ルールとしては100%達成できるかどうかを管理するツールではないため、査定を行うには別途ルールを立てる必要がでてくる。ただし、査定というのは自分の所属しているプロジェクトの成果以外に色々なものが関わってくる。自分たち以外のところとの調整も入ったりもする。そのため、組織の管理と個人の管理の二つに時間をかける必要が出てくることが多いと思う。そこに時間をかけることができない組織って案外あるのではないだろうか。

なので、個人の評価をやっていく必要性がないベンチャーや、時間をおおらかに利用できる組織のほうが導入しやすそうだと感じた。

コンテナ物語

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

この本は

言ってしまえば、ただの「箱」といえるコンテナ。 そのコンテナにいち早く目をつけたアメリカの陸運業マルコフ・マクリーンらが どのように海運を変えてきたか。そのただの箱によって産業や人の認識がどのようにか ビル・ゲイツが2013年に今年読んでよかった本 の一冊に選んでいることでも有名。

感想

話の中心のマルコフ・マクリーンがコンテナ輸送を始めたのが1956年。 その会社のマクリーンインダストリーズが破産したのが1986年。

たかだか30年間の中で、当時の埠頭の現場、港の問題、政府、鉄道会社、技術、労働組合ベトナム戦争など色々な状況や立場の組織や人物たちがひしめき合って、結果的にコンテナ輸送が世界的に進展してきたかが書かれている。

このマクリーンが目をつけ始めた。だが、埠頭で働いていた労働者が自分たちの職を失うのではないかと反発をされたり、かたや港はコンテナ輸送の未来に気づけず、既存のやり方で発展をしようとして税金を無駄にする。海運側がどれだけ計算で効率化ができても、そこで働いている沖仲仕の反対によって赤字化をしたりする。1958年に米海事管理局が、規格化を統一しようと委員会を立てるが、様々な立場からの物言いなどにより、コンテナに関わる全規格の草案ができるのが1970年。1965年にはベトナム戦争により、コンテナ輸送をマクリーンが政府に提言を行うことにより、コンテナ輸送が注目されるようになる。巨大化をし、規模がモノをいう産業になったと思えば、1973年あたりのオイルショックにより、燃費の悪い船が問題視されるように。同時に、規格化が浸透し、コスト削減競争に巻き込まれる。

コンテナの歴史を紐解くと同時に、当時の社会情勢や労働環境、各所の思惑などの交錯をきちんと描かれていて、ひとつの大きなドキュメントを見ているようで楽しい。しかも、それが思っていた以上に短い期間で、本の中でも同時期の話が行ったり来たりすることに凄さを感じる。

この本のテーマは「輸送技術の変化がもたらした影響」「イノベーションの重要性」「輸送コストと経済地理学との関連性」と最初に書かれている。輸送技術によってその周辺の労働者や組織がどう変わってきたか。ただのシンプルな箱がイノベーションによってどう進歩したか。輸送コストと経済地理学はもはやインターネット以前のグロバーリゼーションの話になる。

シンプルなアイデアが色々な人や組織を巻き込んで、歴史を作っていく様を感じさせてくれる一冊。

自衛隊元最高幹部が教える 経営学では学べない戦略の本質

読んだ

この本は

経営戦略の考え方は、もともと軍事戦略の考え方を応用して発展してきたものという 自衛隊元最高幹部の著者による戦略の本質について。 過去の戦史から、意思決定の重要さなどを解説している。

感想

戦略の見落としがちな視点として

  1. 軍事戦略を知らずに「戦略」は語れない
  2. 有事でも確実に戦略に実行する方法論がない
  3. 地政学・地経学的リスクの感度が低い
  4. 日本人の「集合的無意識」を自覚していない
  5. 「戦力回復」で生産性をあげる視点がない

をあげて、それぞれで解説されている。

しかし、軍事戦略に限った話ならばわかりやすいが、経営戦略は本の引用や伝聞が多い。 そのため、ひとつひとつの説明はわかりやすい(集団的無意識の話など)のに それがどう経営戦略に紐づくかがわかりづらい。 大きく外れている話ではないものの、読む側が察する必要がある。

点の話は面白いので、軍事戦略に特化しているほうが面白そうだった。

働き方の哲学

働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える

働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える

この本は?

長き仕事人生に対して、様々な角度から見直しをして、健やかな「観」をつくるのがコンセプト。 章立てはこの6つ。

  • 仕事・キャリアについて
  • 主体性・成長について
  • 知識・能力について
  • 働く意味について
  • 会社の中で働くことについて
  • 心の健康について

それぞれのテーマに項目を2ページ、多くて4ページずつイラストでわかりやすく解説している。

感想

少しでも長く働いている人ならば、心当たりがありそうな項目が網羅されている。 しかも、対立構造を整理して説明されて、どちら側のスタンスに立たずに、 淡々とイラストでわかりやすく説明してくれているおかげで 自分の年齢くらいになったら共感してしまうページが多いのではないだろうか。

あとコラムも興味深いものが多い。 例えば、「個」と「プロジェクト」について触れているところがある。 (参考: 「雇用」の概念がなくなる!? 働き方の変化が企業や人事の在り方を変える(前編) - NEXT HR | HRプロ )

企業で人的資源管理システムを持ち、人材のマッチングや評価や報酬を管理しながら、 社外の人材タレントや社内の人材タレントと契約を行い、 プロジェクトとしての集合を作り、目標を達成したら解散をして、 それぞれの人がまた次のプロジェクトへ、と流動化していく。

そのために軸を持ちながらも、状況に合うように自己再編していくというしなやかさが、 これから必要というもの。

なんとなくこうなっていくという方向性は肌で感じつつも、 制度であったり、個人の生活であったり、安定を脅かすものはどうなっていくんだろうか。

たまに眺めて、頭の中で考えをこねるのに最適な一冊。