ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場
元記者であるイギリス人が描いたハーバードビジネススクール(HBS)の体験記。勉強をする場として素晴らしいし、人脈も広がる。未来にも希望が溢れている。だけど、どこかおかしいという筆者の悶々とした思いが綴られている。
そこにはHBSだけではない学問としての問題が全編を通して見え隠れしている。具体的に目についたのは以下の3つ。
- ビジネスで大成功していない講師に「世界に影響を与えるリーダーを育成する」と、エリート気質を植え付けられていく環境
- 卒業後は、1流の仕事につける可能性が高いが、それは個人を犠牲にしなければいけない可能性があること
- 優秀なリーダーを世に送り出して、08年の経済危機を避けられなかったこと
1つ目は、学内の環境について。いくら素晴らしい公式や知識を教えられたとしても、一度社会に出て活躍した人が、ずっと学問の世界に閉じていた人の話を聞いて、現実的にありえないと思うことはいくつも出てくるのは想像つく。
2つ目は、学ぶことと個人の幸せについての疑問。どれだけ勉強をして、優秀な成績を取って、良い企業で働けるようになったとしても、それが個人や家族の幸せに繋がらない可能性がある。卒業しても自己犠牲がつきまとうかもしれないという悩み。
3つ目は、これだけ世界に影響を与えるリーダーを世に送りながらも、金融危機が起きてしまったことに対して、HBSのMBAたちが世界を牛耳る必要があるかという疑念。
個人としては「なぜ学ぶのか」という疑問。社会として、個人が学んだことが役に立つ時がくるのかという疑問。もやっとしているところに、きちんと批判をしている本だと思う。
【メモ】