ただふれたものについて書くブログ

あんまり正しくない話を適当に書くブログ

コンテナ物語

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

この本は

言ってしまえば、ただの「箱」といえるコンテナ。 そのコンテナにいち早く目をつけたアメリカの陸運業マルコフ・マクリーンらが どのように海運を変えてきたか。そのただの箱によって産業や人の認識がどのようにか ビル・ゲイツが2013年に今年読んでよかった本 の一冊に選んでいることでも有名。

感想

話の中心のマルコフ・マクリーンがコンテナ輸送を始めたのが1956年。 その会社のマクリーンインダストリーズが破産したのが1986年。

たかだか30年間の中で、当時の埠頭の現場、港の問題、政府、鉄道会社、技術、労働組合ベトナム戦争など色々な状況や立場の組織や人物たちがひしめき合って、結果的にコンテナ輸送が世界的に進展してきたかが書かれている。

このマクリーンが目をつけ始めた。だが、埠頭で働いていた労働者が自分たちの職を失うのではないかと反発をされたり、かたや港はコンテナ輸送の未来に気づけず、既存のやり方で発展をしようとして税金を無駄にする。海運側がどれだけ計算で効率化ができても、そこで働いている沖仲仕の反対によって赤字化をしたりする。1958年に米海事管理局が、規格化を統一しようと委員会を立てるが、様々な立場からの物言いなどにより、コンテナに関わる全規格の草案ができるのが1970年。1965年にはベトナム戦争により、コンテナ輸送をマクリーンが政府に提言を行うことにより、コンテナ輸送が注目されるようになる。巨大化をし、規模がモノをいう産業になったと思えば、1973年あたりのオイルショックにより、燃費の悪い船が問題視されるように。同時に、規格化が浸透し、コスト削減競争に巻き込まれる。

コンテナの歴史を紐解くと同時に、当時の社会情勢や労働環境、各所の思惑などの交錯をきちんと描かれていて、ひとつの大きなドキュメントを見ているようで楽しい。しかも、それが思っていた以上に短い期間で、本の中でも同時期の話が行ったり来たりすることに凄さを感じる。

この本のテーマは「輸送技術の変化がもたらした影響」「イノベーションの重要性」「輸送コストと経済地理学との関連性」と最初に書かれている。輸送技術によってその周辺の労働者や組織がどう変わってきたか。ただのシンプルな箱がイノベーションによってどう進歩したか。輸送コストと経済地理学はもはやインターネット以前のグロバーリゼーションの話になる。

シンプルなアイデアが色々な人や組織を巻き込んで、歴史を作っていく様を感じさせてくれる一冊。