日本的雇用慣行の経済学
- 作者: 八代尚宏
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 1997/01
- メディア: ハードカバー
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池田信夫先生や池田信夫先生をdisってるブログの両方がオススメしていることに興味が沸いたので、ためしに読んでみた。97年の本ながらホントに面白かった。
終身雇用などといった日本独特とされた雇用慣行が、どのように有効に機能していったのか、また今後起こる問題について、その慣行がどのような弊害が出てくるかを検討している。女性の社会進出・国際化・高齢化・国の社会保障制度の不備、学歴社会についてなど、幅広い視点で検証しつつも、250ページほどの本ながら、無駄がなくまとまってる。
日本は大企業・官庁のみとは言えども、基本的には終身雇用であって、年を重ねるごとに賃金が上がっていくシステムで、一見楽そうな印象がある。だけれど、実はあちこちに転勤や異動があったり、ポスト争いがあったり、国の社会保障があまり充実していないため、年齢を重ねていくにつれてどんどん自分にかかる費用が高くなっていくので、その補償を吸収する役割を企業が受け持っている側面があるし、それはつまり、若いうちは賃金の額が小さいことを指していて、それを『生涯を通じた賃金の後払い』と上手い表現している。
日本の雇用慣行とは、大企業で苦労しながらも我慢してうん十年過ごしていれば、いずれ自分に見返りがきますよー。だからそれまで仕事の内容ではなく、勤続年数が自分の価値であることを自覚して働けよ若者ーって自分は捉えたのだけど、ここ10数年で労働組合が現象して、景気も極端に上がらない状態になってしまい、企業が雇用者の社会保障機関っぽい役割を捨ててきているわけで、見返りのない献身が現在の若年層に来てるように思える。
ちなみに、この本の著者は2006年末あたりに議論されていたホワイトカラー・エグゼプションの推進派だったらしいけれど、この本で企業の役割の大きさや、年齢を重ねるごとに個人が負担増、残業を前提とした企業体制などハッキリと捉えてるのに、社会保障の充実も進んでいない状態であの立場に置いて推進っていうのは、自分の中ではさっぱり繋がらない。少なくとも労働者の目線じゃない。経済学者っていうのはホントよくわからない。